ニキビ(尋常性痤瘡)
ニキビとは
ニキビ(尋常性痤瘡/じんじょうせいざそう)とは、顔や背と胸に見られる炎症性皮膚疾患の一つで、単に痤瘡(ざそう)や面皰(めんぽう)と呼ばれることもあります。青春の象徴とも言われるように、10代の思春期に発症することが多いのが特徴です。20代を過ぎると徐々に少なくなってきますが、さらに30代以降でも「大人ニキビ」としてお悩みの方も多く、若い頃に悪化させて、ニキビ跡として残ってしまうこともあるので注意が必要です。
処置の遅れや自己判断の家庭治療などで悪化させて、ニキビ跡が残らないようにするためにも、専門の皮膚科で適切な治療を早めに行うことが大切です。
なお、ニキビという呼び名は青年期のみに使われることが多く、同様の原因・症状であっても成人以降は吹き出物と呼ばれるのが一般的です。
症 状・・・おでこ、頬、口の周りや下顎といったお顔周辺の他、背中や胸の中央などの皮脂分泌量の多い皮膚に発疹が生じ、初期の皮脂が詰まっただけの状態から、炎症を起こして赤くなった状態、さらには悪化させてしまうと膿瘍、排膿を伴うものまで段階があります。
ニキビの原因と種類
ニキビ発症のポイントは「アクネ菌」の存在、「皮脂量の増加」、そして「毛穴のつまり」!
通常の健康な毛穴
健康な通常の皮膚であれば、皮脂が分泌されてもお肌のターンオーバー(一定の周期でお肌が生まれ変わる機能)によって毛穴から排出されていきます。また、毛穴が開いているのでアクネ菌などの常在菌(どなたのお肌にも存在している細菌)も、洗顔や洗浄で洗い流され、増殖してしまうことはありません。
発生の要因〜症状の悪化
1. 皮脂の過剰分泌
思春期で性ホルモンの分泌が活性化したり、成人であってもストレスなどで性ホルモンが過剰になることで、毛穴の奥の皮脂腺から皮脂が大量に分泌されます。また女性の場合、ストレスや生活習慣の乱れなどにより男性・女性ホルモンのバランスの崩れることでたくさんの皮脂が排出され、それら大量の皮脂がニキビの原因の一つとなります。
2. 毛穴のつまり
さらにホルモンバランスの変化などでお肌のターンオーバーが乱れると、毛穴の角質が厚くなってしまうことで毛穴が塞がってしまい、皮脂が排出されなくなります。
3. 白ニキビ
アクネ菌の増殖・・・毛穴がつまると皮脂が排出されないので充満して増えていきます。すると毛穴の内部(毛包)でアクネ菌が増殖していき、毛穴は白い点のような状態になります。
4. 黒ニキビ
白い点(白ニキビ)はやがて黒っぽく変色していくものもあります。
5. 赤ニキビ
アクネ菌がさらに増殖・・・ 排出されずに増殖したアクネ菌は、皮膚の表面に炎症を引き起こし赤なっていきます。さらにアクネ菌以外の細菌も増殖し、炎症が進みます。
6. 黄ニキビ
膿瘍、排膿・・・さらに悪化し炎症が激しくなると、表面に膿(うみ)が見えるようになり、黄色く膨らんできます。皮膚の内部では毛包を破ってアクネ菌や他の細菌が飛び出し、さらに炎症が広がってますます悪化していきます。
ニキビの予防方法
生活習慣に注意
脂質、脂肪分の多い食事を採りすぎると皮脂が過剰分泌されがちです。栄養のバランスのしっかり考えて食事をしましょう。 また、体調や精神状態も皮脂分泌のコントロールに影響を与えます。十分に睡眠をとり、規則正しい生活をおこなって、睡眠不足やストレスを軽減するよう心がけましょう。
お肌を清潔に
年齢による皮脂の分泌の増加は避け難いものですが、皮脂詰まりを起こさないようにお肌を清潔に保ち、乾燥でお肌が荒れないようにしっかりと保湿することも大切です。
適度に保湿されたお肌は皮脂の分泌もコントロールが行き届き、さらにお肌のバリア機能の低下も防ぎます。
皮脂が毛穴を塞ぎ、アクネ菌が繁殖しやすい環境を作らないように努めましょう。
できてしまってからも要注意
ニキビができてしまってからも注意が必要です。雑菌がついた手でニキビを触ることで患部が悪化し、炎症がひどくなってしまいます。
また、ニキビの膿が出て黄ニキビになると気になって、ご自身で潰してしまいがちですが、不用意に潰すと傷になって跡が残ってしまいます。自身では潰さず必ず専門の皮膚科を受診してください。
ニキビの治療
外用薬と内服薬を処方して治療していくことが一般的です。また、ニキビを改善するだけでなく跡を残さないようにすることも重要です。
抗菌や毛穴のつまりを改善効果のある塗り薬と、炎症がひどい場合には抗生物質の内服薬を用いることで、悪化した症状を抑えていきます。
また、慢性の疾患であるニキビの長期間の治療に対応するため、患者様の特性やご希望により、漢方薬の服用も検討します。
当院での対応
当院の治療
医師が状態を視診で確認します。また、発症した時期や患者様の生活環境や生活習慣などについて問診し、予防や今後の対応、治療方針などを相談します。以下の処方薬で症状の改善に努めます。
外用薬 1.(毛穴の詰まりを改善)
- ディフェリンゲルニキビの第一選択薬として処方されることが多いお薬です。主成分の「アダパレン」はレチノイドに似た構造を持ち、顆粒細胞から角質細胞になり毛穴が狭くなることを防ぐ効果が期待できます。
- ベピオローション主成分の「過酸化ベンゾイル」は角層剥離作用(ピーリング作用)があり、さらにアクネ菌などの細菌に対する抗菌作用も有するお薬です。薬剤耐性菌の報告がなく、長期で使用しても安定した効果が期待できます。(ローションいなったことで従来のゲルより刺激が軽減し、赤み乾燥の副作用も1/3まで減少しました。)
- エピデュオゲル上記の「アダパレン」と「過酸化ベンゾイル」という2つの有効成分を含んだ治療薬です。両方の治療効果が期待できますが、お肌に合わなかった場合のために、まずはディフェリンやベピオローションから治療をはじめることがあります。
- デュアック配合ゲル上記の「過酸化ベンゾイル」に加え「クリンダマイシン」を成分に含んだ治療薬です。角質剥離作用、抗炎症作用、抗菌活性作用があり、赤ニキビの早期治療が期待できます。
外用薬 2.(抗菌剤)
- ゼビアックスローションキノロン系の合成化合物である有効成分オゼノキサシンが、ニキビの原因となるアクネ菌の増殖を阻害します。
- アクアチムクリーム有効成分ナジフロキサシンが皮膚表面のアクネ菌の増殖を抑制し、殺菌を行う効果があります。赤ニキビに対し高い効果を発揮します。
内服薬 1.(抗菌剤)
- ビブラマイシン皮膚の細菌感染をはじめ様々な細菌感染症に有効で、赤ニキビなどの炎症が進んだニキビに使用します。
- ミノマイシン皮膚の細菌感染をはじめ様々な細菌感染症に有効で、赤ニキビなどの炎症が進んだニキビに使用します。アクネ菌が皮脂を分解して、炎症を起こす脂肪酸を作る働きを抑えます。
内服薬 2.(漢方薬)
- 桂枝茯苓丸加薏苡仁血液のめぐりを良くして、肌に栄養が行き渡る効果が期待できます。
- 十味敗毒湯化膿しやすい体質に改善が期待できます。
- 清上防風湯 顔の熱や炎症をさます作用が期待できます。
皮膚科の病気に関しては、日本皮膚科学会にも分かりやすい解説がございます。どうぞご参照ください。